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熊本地方裁判所 昭和42年(ワ)663号 判決 1968年10月11日

主文

被告は原告に対し、金一一万円および内金一〇万円に対する昭和二八年一〇月一七日から支払ずみまで年一割の割合の、内金一万円に対する昭和二九年一一月一五日から支払ずみまで年二割の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

一  当事者の求める裁判

(原告)

被告は原告に対し、金一一万円および内金一〇万円に対する昭和二八年一〇月一七日から、内金一万円に対する昭和二九年一一月一五日からいずれも支払ずみにいたるまで年二割の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

旨の判決

(被告)

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

旨の判決

二  当事者の主張

(原告の請求原因および被告の抗弁に対する主張)

(一)  原告は被告に対し、

(1) 昭和二八年一〇月一七日、金一〇万円を、弁済期同年一一月五日、利息月三分と定めて貸付け、

(2) 昭和二九年一一月一五日、金一万円を、弁済期同年一一月二五日、利息月二分と定めて貸付けた。

よつて、右貸付金合計一一万円と内金一〇万円に対する貸付日の昭和二八年一〇月一七日から、内金一万円に対する貸付日の昭和二九年一一月一五日から各支払ずみまで年二割の割合による利息・遅延損害金(金一〇万円の分は昭和二八年一一月五日までは利息その後は遅延損害金、金一万円の分は昭和二九年一一月二五日までは利息その後は遅延損害金)の支払を求める。

被告は昭和三二年二月、昭和三七年六月に右の債務を承認したので、被告主張の時効は右の債務承認により中断した。

(請求原因に対する被告の認否と抗弁)

原告主張の金一〇万円の消費貸借の事実は認めるが、金一万円の消費貸借の事実は否認する。

かりに、原告主張のとおり金一万円の貸借があつたとしても、右二口の債権はいずれも貸付日より一〇年の経過とともに時効により消滅しており、被告は本訴において右時効を援用する。

原告が時効中断事由として主張する債務承認の事実は否認する。

三  証拠関係(省略)

理由

原告主張の二口の消費貸借の内金一〇万円については当事者間に争いがなく、金一万円については、成立に争いのない甲第二号証によつてこれを認めることができ、この認定に反する証拠はない。

よつて、被告主張の時効の抗弁について考察するに、証人江藤一男の証言によつて真正に成立したと認められる甲第三号証の一・二、原告本人尋問の結果によつて真正に成立したと認められる甲第四号証の一・二に証人江藤一男の証言および原告本人尋問の結果を総合すると、原告は昭和三二年中に阿蘇町の経済課長をしていた被告を同町役場に訪ねて右二口の貸金について支払を催促したところ、被告は右債務を承認し、支払の猶予を求めたこと、更に昭和三七年五月末頃代理人訴外江藤光雄をして支払を催促したところ、被告は右債務の支払義務を承認したことが認められ、この認定に反する証拠はない。

右認定事実からすると、右債権の消滅時効は被告の債務承認により中断していることが明らかであり、被告の抗弁は理由がない。

そうすると、被告は原告に対し、右二口の消費貸借について元本およびこれに対する貸付日から支払ずみまでの利息・遅延損害金(金一〇万円の分は昭和二八年一一月五日までは利息その後は遅延損害金、金一万円の分は昭和二九年一一月二五日までは利息その後は遅延損害金)の支払義務があるというべきであるが、金一〇万円の貸借は昭和二八年一〇月一七日でその利息・遅延損害金は旧利息制限法(明治一〇年太政官布告第六六号)の適用をうけるものであり、同法第二条によると右貸借の利息は年一割を超ゆる分は裁判上無効と定められているので、原告が裁判上請求しうる利息は約定利息の範囲内において年一割に制限され、また前認定のとおり遅延損害金の定めはなかつたのであるからその額は右制限利息と同額の年一割となり、金一万円の貸借は現行利息制限法の適用をうけ、その利息・遅延損害金はいずれも約定利息の範囲内において年二割の限度において有効というべきである。

よつて、原告の本訴請求は金一一万円および内金一〇万円に対する昭和三八年一〇月一七日から支払ずみまで年一割の割合の金員、内金一万円に対する昭和三九年一一月五日から支払ずみまで年二割の割合の金員の支払を求める限度においては正当として認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九二条但書を適用して主文のとおり判決する。

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